病理診断科 中川温子
小児がん、特に脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫、網膜芽腫、腎芽腫、肝芽種、横紋筋肉腫などの固形腫瘍の診断は、病理診断により確定します。小児がんの進行はしばしば急激であること、また、がんの種類によって治療方法(抗がん剤、外科手術、放射線治療など)が異なることから、病理診断には、正確、かつ迅速な対応が要求されます。
病理診断を行う専門医である病理医は、全国で2,000名程度と少数です。小児がん診断の経験が豊富な病理医はさらに少数です。小児がんの頻度、予後(治る可能性)、治療方法などを研究する研究組織(グループ)は、小児がんの診断をより正確に行うために、病理中央診断システムを整備しています。病理中央診断システムでは、小児がんの病理診断の経験が豊富な病理医が(他の医療施設の患者さんであっても)依頼された診断を行います。
小児がんの疑いがある場合、病理診断のために病変組織を手術により採取する生検(せいけん)が行われます。病変組織は病理検査室に届けられ、まず、本当にがんであるかどうかが確認されます。術中迅速診断(じんそくしんだん)という方法では、病変組織は直ちに凍結され、標本(ひょうほん)と呼ばれる観察可能な状態に加工され、顕微鏡で観察され、病理診断されます。小児がんであることが確認されれば、直ちに手術中の外科医に連絡され、必要な対応が行われます(引き続き必要な手術の継続、抗がん剤治療に必要な中心静脈カテーテルの設置など)。生検により採取されたがん組織は、正確な診断のために必要な評価を行うことが可能な状態(ホルマリン固定、凍結など)に処理され保存されます。数日から数週間程度を要して、病理医は、がん細胞の形態、性質(免疫組織染色、遺伝子解析という方法が用いられます)を評価し、正確な病理診断を行います。多くの小児がんは、形態だけでは明らかな特徴を示さないので、正確な診断のためにはさまざまな解析が必要なことも少なくありません。
病理医は、上記の病理診断の他、脳脊髄液(のうせきずいえき;脳・脊髄の周囲を循環する液体)、胸水(きょうすい;肺、心臓の周囲に貯まった液体)、腹水(ふくすい;腸の周囲に貯まった液体)などの中に存在するがん細胞の診断、病理解剖診断も担当しています。病理医は、正確、かつ、迅速な診断を提供するために、診断、経過を検討するカンファレンスなどにも参加する小児がんの医療チームの一員です。
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