小児がん情報ステーション

会員医療者ページ

診断と治療

外科治療

手術は必ずしなければならないのでしょうか?

小児がんの治療は、手術、抗がん剤による化学療法、放射線療法などを組み合わせて行なわれますが、固形腫瘍と呼ばれる、腫瘤を作るタイプの悪性腫瘍では、今日でも基本的に、手術により腫瘍を全て切除することが長期生存の必須条件と考えられています。小児がんでは抗がん剤が良く効く腫瘍が多くみられますが、抗がん剤のほとんど効かない腫瘍や、どのような抗がん剤が効くのか未だに良く分かっていない腫瘍もあります。特に抗がん剤が効かないと考えられている腫瘍では、手術による切除が治療の中心となります。例外的には手術のかわりに放射線を照射したり、乳児期の神経芽腫のようにリスク因子がなければ大きな手術を避ける場合もあります。

手術はすぐに行なうべきなのでしょうか?

腫瘍が小さく、手術で安全かつ完全に腫瘍が切除できる場合、はじめに手術を行なうこともあります。しかしながら小児がんでは、腫瘍が非常に大きくなるか、他の部位へ転移してその症状で発見される場合が多く、こうした場合、いきなり手術で腫瘍を全て切除することは不可能か、大きな危険を伴うと考えられます。また、みかけ上、腫瘍を切除できても肉眼的、顕微鏡的な取り残しがある可能性も高いと考えられます。そこで、一般的には、初回には腫瘍の一部のみを採取し(生検と呼びます)、それを調べて診断の確定や抗がん剤の選択を行ない、化学療法で腫瘍が小さくなってから腫瘍の全摘を行なう方針が取られます。一方、腫瘍がかなり大きくても比較的安全に全摘できる腎のウィルムス腫瘍では、世界的に、はじめに化学療法を行なってから手術する方法と、はじめに手術で切除してしまってから化学療法を行なう方法のいずれもが行われています。

手術の危険性はどのように判断するのですか?

腫瘍のひろがりや出て来た部位は手術の安全性を考える上で重要です。周囲の臓器への浸潤の有無、主要な血管との位置関係などにより、隣接する臓器の合併切除の可能性や、血管からの大量出血の危険を考えなければなりません。重要な臓器や血管のまわりに腫瘍が進展していて切除不能であることもあります。近年、神経芽細胞腫ではIDRF (Image Defined Risk Factor) という概念があります。腫瘍が大事な血管を巻き込んでいる場合など、放射線学的画像から手術の危険度を判断し、腫瘍の悪性度を勘案してどのような手術をするか、あるいは手術を見合わせるかなど判断しようとする考え方です。

転移巣に対する手術もあるのですか?

肺の転移性腫瘍など、抗がん剤で完全に消失しない病巣を手術で切除する場合があります。肝芽腫の肺転移などでは、転移巣に対する積極的な切除がしばしば行なわれます。しかしながら一方で、外科手術の対象となるのはあくまでも肉眼的に見える病変であり、多発性の転移がある場合、目にみえない多くの腫瘍細胞が散らばっている可能性も否定はできません。手術よりもこうした腫瘍細胞の治療を徹底的に行なわなければならない場合も少なくありません。

手術にはどのような合併症が考えられますか?

腫瘍のある臓器の切除や周囲臓器の損傷による障害は最も大きな問題です。膀胱や前立腺に出て来た横紋筋肉腫では、膀胱、尿道を介した排尿ができなくなることもあります。腎臓の近く、特に腎動脈の周りの腫瘍を切除したり、さらにそこへ放射線照射を行なったりすると、手術後に徐々に腎動脈の狭窄が起こり、腎機能が低下したり、高血圧症を併発したりすることがしばしば見られます。そのほか、開腹手術後の癒着性腸閉塞など、外科手術の一般的な合併症も起こる可能性があります。
以前は、大きな合併症や臓器機能障害を残しても、助かるためには手術による積極的な切除はやむを得ないという考え方が支持されていましたが、今日では、手術後も高い生活の質を維持できるようにできるだけ工夫をするべきだと言う考え方が強くなってきました。こうしたことを色々勘案して、個々の患者さんの小児がんに対してどのような手術を行うかが決められています。