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疾患別情報

ウィルムス腫瘍

 

どのような腫瘍なのですか?

 腎臓、まれには腎臓周囲から出る、胎生期の腎芽細胞由来の悪性腫瘍で、腎芽腫(じんがしゅ)とも呼ばれます。3歳未満に多くみられ、両側の腎臓に腫瘍のあることもあります。
 ウィルムス腫瘍の概ね80%以上は治療に良く反応するタイプ(予後良好型)ですが、治療に抵抗性を示すもの(予後不良型)も一部にみられ、特に頻度は低いのですが、腎明細胞肉腫、腎横紋筋肉腫様腫瘍の治療は難しいと考えられています。このほかに、子どもの腎臓に腎細胞癌が発生することがあります。また小さい年齢では予後良好な間葉芽腎腫(かんようがじんしゅ)という腫瘍もみられ、ウイルムス腫瘍と鑑別が必要になります。

何か原因は分かっているのですか?

 ウィルムス腫瘍では、WT-1というがん抑制遺伝子の変異による発がんのメカニズムが知られています。染色体上でWT-1遺伝子近傍には虹彩や腎・泌尿器系の発生に関わる遺伝子があり、染色体のこの部分に何らかの原因によるダメージがあった場合、無虹彩症や尿道下裂など泌尿器系の先天奇形に合併してウィルムス腫瘍が発症することが知られています。その他、臓器肥大や過成長、臍帯ヘルニアを主徴とするBeckwith-Widemann症候群などでも高率にウィルムス腫瘍が発症することが知られています。

どのように診断されるのですか?

 ウィルムス腫瘍の典型的な症状は腹部腫瘤、血尿、腹痛と言われますが、実際にはこれらの症状が全てそろうことは多くありません。診断には超音波検査、CT,MRIなどが行われます。肺や肝臓、脳に転移することが多いのでこれらの臓器のチェックも行われます。血液の検査でレニンという腎臓で作られる血圧を上げる働きのホルモンが増えていることもあります。

どのような治療をするのですか?

 治療の基本は腫瘍の切除と化学療法です。まず腫瘍を切除してそれから化学療法を行う場合と、最初に化学療法を行ってから手術を行う場合があります。大きな腫瘍では下大静脈や心臓の中まで腫瘍血栓(しゅようけっせん)ができていることが稀にあり、化学療法で血栓をできるだけ小さくした上で、必要があれば人工心肺を使用してこれらの腫瘍血栓を切除することもあります。可能であれば正常部分の腎臓を残すことを目指しますが、多くの場合は腫瘍のある腎臓を合併切除しなければなりません。
 ウィルムス腫瘍に対する抗がん剤の組み合わせは、予後良好型か予後不良型か、腫瘍の進展度などによって、ビンクリスチン+アクチノマイシンDの二剤か、ビンクリスチン+アクチノマイシンD+アドリアマイシン(ドキソルビシン)の三剤かのどちらかが選択されます。放射線照射についても同様です。局所の再発の危険性が高いと考えられる場合は腹部への放射線照射が行われます。また、肺転移がある場合には両側の肺への照射が行われます。
 両側性のウィルムス腫瘍については、原則として、それぞれの腎腫瘍に対して組織型と腫瘍のひろがりが検討され、その結果に応じた化学療法と放射線照射が選択されます。手術では可能な限り腎機能を残すことを目指します。

どれくらい治るのでしょうか?

 ウィルムス腫瘍全体の長期生存率は90%を超えています。特に予後良好型の場合には、遠隔転移があっても4年生存率が90%と報告されています。一方、予後不良型の場合には長期生存率は低下し、4年生存率は、転移がなくても腫瘍が大きい場合で56%、転移のある場合は17%という報告があります。両側のウィルムス腫瘍の場合には、左右それぞれの腫瘍の病期および組織型により治癒率が異なります。

治療にはどのような合併症があるのでしょうか?

 化学療法による合併症として、骨髄抑制(白血球の減少)に伴う感染症、ビンクリスチンによる神経障害(筋力低下、けいれん)、アクチノマイシンDによる肝障害、アドリアマイシンによる心筋障害、抗がん剤の全てに共通するものとして二次がん、不妊が挙げられます。
 ウィルムス腫瘍では腎炎を起こして腎機能が廃絶する原疾患を持っていることもあり、また化学療法や手術により腎機能が失われることもあります。この場合、将来的に透析や腎移植が必要になることもあります。
 治療終了後も、心筋障害や、もう一方の腎に腫瘍が出ることがあり(全体の1~3%)、定期的なチェックが必要です。

(最終更新日:2011/11/8)