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疾患別情報

急性前骨髄球性白血病

略語・別の呼び方は?

英語表記であるacute promyelocytic leukemia を略してAPL と呼ばれます。また、白血病などの国際分類であるFAB(French-American-British)分類では「M3」、WHO分類(第4版)では「t(15;17)(q22;q12); PML/RARαを有するAML」に分類されます。

どのような病気ですか?

APLは急性骨髄性白血病(AML)のひとつの病型で、造血前駆細胞の中でも骨髄前駆細胞(こつずいぜんくさいぼう)と呼ばれる未熟な血液細胞に由来します。骨髄前駆細胞とは、白血球の成分である顆粒球(かりゅうきゅう)や単球(たんきゅう)、赤血球(せっけっきゅう)、血小板(けっしょうばん)の元になる血液細胞のことです。APLでは、白血病細胞が前骨髄球(ぜんこつずいきゅう)と呼ばれる段階で分化障害を起こし(未熟な細胞が成熟した細胞になることを「分化:ぶんか」といいます)、アズール顆粒とよばれる顆粒をたくさん含んだ異常な前骨髄球が、骨髄(骨の中にある血液細胞が造られる組織)や血液中に増加します。このため、正常な血液細胞が作れなくなります。また、APLの白血病細胞は、線溶系(せんようけい;固まった血液を溶かすシステム)を活性化する物質を多量に作ります。そのために、体内の凝固系(ぎょうこけい;血液を固めるシステム)や線溶系が破綻してしまい、「播種性血管内凝固症候群(DIC)」とよばれる合併症を引き起こし、重篤な出血症状を起こします。

頻度は?

APLはAMLの10~15%を占めますが、小児のAPLはまれであり、本邦での発生頻度は年間16例程度と推測されます。また、小児の中では、年長児に多くみられます。

原因は?

APLは、未熟な血液細胞の一部で、15番と17番の染色体に転座(てんざ)とよばれる異常が起こり、15番染色体上にあるPML遺伝子と17番染色体上のRARα遺伝子が融合した、PML/RARα融合遺伝子(ゆうごういでんし)が形成されることで発生します。頻度は少ないですが、15番染色体以外の染色体と17番染色体とが転座を起こすタイプも知られています。ただし、染色体転座が生じる理由は分かっていません。

生存率は?

約90%に完全寛解(顕微鏡など目に見えるレベルで白血病細胞が消失している状態)が、約80%に長期生存が期待されます。AMLの中でも最も良好な治療成績が得られています。

どのように診断しますか?

骨髄穿刺(骨盤の骨などに針を刺して、注射器で骨髄液を吸引する検査)を行い、骨髄液の標本を顕微鏡で観察して診断します。骨髄液の一部を利用して、白血病細胞の表面にある目印(細胞表面抗原/マーカーと呼びます)や染色体・遺伝子の異常を調べます。APLでは多くの場合、染色体検査でt(15;17)(q22;q12)の異常が、遺伝子検査でPML/RARα融合遺伝子の異常が見つかります。

どのような治療が行われますか?

APLでは、全トランスレチノイン酸(ATRA)と複数の抗がん剤を併用した治療が行われます。通常、寛解導入療法、および強化療法(入院治療期間約4~6カ月)と、約1年間の維持療法(外来治療)からなります。
ATRAはPML/RARα融合遺伝子から作られるPML/RARα融合タンパク質に結合することで、白血病細胞の分化障害を解除し、白血病細胞を好中球にまで分化させます。通常の抗がん剤と異なり、白血病細胞の細胞死を起こさないため、DICを増悪させることなく、安全に完全寛解に到達させることが可能になります。ただし、ATRAを用いた治療中に、「APL分化症候群(レチノイン酸症候群ともいいます)」とよばれる重篤な急性循環呼吸不全症候群を起こすことがあります。主な症状は、発熱、呼吸困難、低血圧、肺水腫、胸水・心嚢水(しんのうすい;心臓の周囲に液体が貯まる状態)貯留、腎障害などです。この場合はATRAの休薬やステロイド剤の投与が必要になります。その他、頭蓋内圧亢進症(ずがいないあつこうしんしょう)とよばれる頭痛や嘔吐、意識障害、痙攣などを引き起こす合併症が起こることがあります。
このように、APLの治療では、特に寛解導入療法中におけるDICとAPL分化症候群に対する対策が非常に重要です。

2009年10 月28日更新 東京医科歯科大学大学院 発生発達病態学分野 富澤 大輔