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疾患別情報

ダウン症候群に合併した急性骨髄性白血病

略語・別の呼び方は?

急性骨髄性白血病は英語表記であるacute myeloid leukemia あるいはacute myelogenous leukemia を略してAML と呼ばれます。白血病などの国際分類であるWHO分類(第4版)では、ダウン症候群関連骨髄性白血病(Myeloid leukemia associated with Down syndrome)として、一過性異常骨髄症(Transient abnormal myelopoiesis; TAM)と共に、ダウン症候群関連骨髄増殖症(Myeloid proliferations related to Down syndrome)というAMLの中の独立したカテゴリーに分類されています。

どのような病気ですか?

ダウン症候群児に発症したAMLの総称です。発症年齢、白血病細胞の性質、経過、治療などの特徴が、非ダウン症候群児に発症したAMLとは大きく異なるため、近年独立して扱われるようになりました。
急性骨髄性白血病は、骨髄前駆細胞(こつずいぜんくさいぼう)と呼ばれる、未熟な血液細胞に由来します。特に、ダウン症候群に合併したAMLでは、急性巨核芽球性白血病(未熟な巨核球の性質を有する白血病細胞;巨核球は血小板を産生する血液細胞です)が多いのが特徴です。白血病細胞は骨髄(骨の中にある組織で、ここで血液細胞が造られています)で増殖するため、正常な血液細胞が造れなくなります。

頻度は?

ダウン症候群児では、5歳までに急性白血病を発症するリスクが非ダウン症候群児と比べて約50倍高いとされています。AMLはその約半数を占めます。本邦における発生頻度は年間約21~28例程度と推定されます。ほとんどが5歳以下であるなど、発症年齢が低いことが特徴です。

原因は?

原因は明らかではありません。ただし、ダウン症候群に合併したAMLの多くで、造血転写因子(ぞうけつてんしゃいんし;血液細胞の成熟や増殖に関わる働きをする因子)であるGATA1遺伝子に変異と呼ばれる異常があることが近年わかってきました。なお、ダウン症候群の新生児の約10%に、一過性異常骨髄症(Transient abnormal myelopoiesis; TAM)と呼ばれる、一過性に血液や骨髄で巨核芽球が異常増殖する病態がみられ、そのうち20~30%で1~3年後にAMLを発症することが知られています。実は、このTAMでも巨核芽球にGATA1遺伝子の変異が見つかっています。このことから、GATA1遺伝子変異に別の遺伝子や染色体の異常が加わることで白血病化する機序が考えられています。

生存率は?

90%以上に完全寛解(かんぜんかんかい;顕微鏡など目に見えるレベルで白血病細胞が消失している状態)、80%以上に長期生存が期待されます。AMLの中でも最も良好な治療成績が得られています。

どのように診断しますか?

骨髄穿刺(骨盤の骨などに針を刺して、注射器で骨髄液を吸引する検査)を行い、骨髄液の標本を顕微鏡で観察して診断します。骨髄液の一部を利用して、白血病細胞の表面にある目印(細胞表面抗原/マーカーと呼びます)や染色体・遺伝子の異常を調べます。ただし、ダウン症候群に合併したAMLでは、骨髄に線維化(せんいか;血液を造る組織の中に多数の線維を生じる病的な変化)と呼ばれる変化を生じていることが多く、骨髄液を吸引できないことがあります。この場合は、骨髄組織の一部をそのまま採取する、骨髄生検(こつずいせいけん)が行われます。

どのような治療が行われますか?

複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法と呼ばれる治療が行われます。ダウン症候群に合併したAMLは抗がん剤に対する治療反応性が良好である一方、治療に関連した合併症(感染症や出血、臓器障害など)の頻度も、非ダウン症候群のAMLと比較して多いことが知られています。したがって、現在ダウン症候群関連のAMLでは、治療を軽減した化学療法を行うことが主流になっています。

2009 年10 月28日更新 東京医科歯科大学大学院 発生発達病態学分野 富澤 大輔