小児がん治療患者の長期フォローアップとその体制整備に関する研究
- 【研究課題】
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厚生労働科学研究費補助金「小児がん治療患者の長期フォローアップとその体制整備に関する研究」のご紹介
- 【研究班を紹介します】
- 国立成育医療センター研究所の藤本純一郎と申します。ここでは、わたくしが担当しております研究班の紹介をさせていただきます。小児がんの治療成績は最近大変良くなってきておりますが、その結果、長期に生存される方も当然増えることになります。小児がんを克服して成人してゆく方のことを外国では、Childhood Cancer Survivor (CCSと略)と呼んでいます。わが国には適切な言葉はございませんが、ここでは、小児がん経験者という呼び方を使わせていただきます。
概算では、成人500人にひとりぐらいの小児がん経験者がいらっしゃることになるそうです。日本全国では現在、小児がん経験者はおそらくは2-3万人だろうと予想されます。これらの小児がん経験者の方々の中には全く問題がない方も見えますが、色々な問題を抱えていらっしゃる方がお見えになることが分かってきました。研究班では、このように小児がん経験者が将来経験される色々な問題を早く見つけ、予防したり治療したりすることで、問題の発生を抑えたり軽く済ませたりできないか、ということを研究しています。
- 【研究の説明】
- 研究はふたつの柱から出来ています。ひとつ目の柱は、“小児がん治療患者の長期フォローアップ体制の整備”です。ふたつ目の柱は“小児がん登録体制の整備”です。一見関係がないテーマのように思えますが、実は互いに密接に関係しています。まずは、ひとつめの柱から説明を致します。
- 【ひとつめの柱】― 小児がん治療患者の長期フォローアップ体制の整備 ―
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治療が終了した後、長年を経て出現する様々な問題のことを英語ではLate Effectと呼びます。日本語ではなかなかいい表現がないのですが、さまざまの方のご意見を聞いて“晩期合併症”と呼ぶことにしています。このページを読んで頂いている方の中に、もっといい呼び方を思いつかれた方はぜひともお教えください。お願いいたします。
- 1)みんなで共通の認識を持とう
- その晩期合併症ですが、どのようなものが、いつごろ、どういった方に生じるのか、ということさえ、正確な情報はございません。また、医療関係者の中にも、小児がん経験者の晩期合併症を真剣に考えないといけない、という意識が十分に高いとは言えないかもしれません。そこで、このひとつ目の柱の中では、まずは、医療関係者の中で小児がん経験者を長期にわたってきちんとフォローすることが大切である、という意識を持ってもらう活動をしています。
小児がん診療に従事する医師と小児がん患者の支援をする方たち(支援者)を対象とした調査結果では、医師らは「長期フォローアップに対する必要性の認識不足」というソフト面での課題が重要と考えていたのに対し、支援者らは「長期的なフォローを実施する専門医・専門機関の不足」というハード面での課題が重要と考えていることが分かりました。どちらも重要な課題ですので、これらをどのようにして解決したらよいかを今後検討したいと考えております。
- 2)長期フォローアップのモデルとなる病院を作ろう
- 長期にわたるフォローアップを行うためには、病院の意識的かつ継続的な取り組みが必要です。そのためには、どんな体制が良いのか、どんな問題があるのか、といったことを調べることが必要です。そこで、研究班では、全国で16か所の病院にご協力を頂き、長期フォローアップ拠点モデル病院として活動していただいております。それらの病院にお願いしておりますことは、①長期フォローアップの対象となる患者さんのリストを作成すること、②長期フォローアップ外来を開設していただき患者さんたちに情報提供していただくこと、③各々の病院でどのような問題点があるのか、問題点があったけれどこういうふうにして解決した、などの情報を報告してもらい皆さんと共有させてもらうこと、などです。研究班で参加していただいている病院は表に掲載しておりますのでご参照ください。
このような活動を通じて、小児がん経験者の長期フォローアップにはどのような体制が必要か、を考え実現してゆきたいと考えています。 - 3)長期フォローアップセンターを作ろう
- 長い人生の中では、入学や就職を機会に転居したり、主治医がおやめになったりなど様々な出来事があると思います。そのような状況の中でも、どこへいっても自分が過去に経験した病気のことや今後起こりうること、あるいは今起こっていることについてきちんと理解され、適切なサービスを受けることができることが望ましいと考えています。また、すべての医療関係者も「あの患者さんは今頃どうしているだろうか」と思っているはずです。このような小児がん経験者と医療関係者の双方にとって大切な情報を長年にわたって維持し、かつ、必要なサービスを提供できる仕組みが必要だと考えています。
わたしたちが研究班で提案している仕組みは、いつでも、どこからでも、小児がん経験者が自身の治療歴にアクセスすることができたり、抱えている悩みを解決できたり、フォローアップ計画を確認できるというものです。また、晩期合併症についての最新情報もお伝えする場所になればよいと考えています。これにはインターネットを利用することが最も効率的だと考えています。しかし、個人情報をしっかりと守るにはどのぐらい強固な仕組みが必要か、長期にわたり継続的に運用するための資金はどのように調達すればよいかなど、解決すべき課題も多いのが実情です。 
- 【皆様へのメッセージ】
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研究班では、小児がんの克服を目指す他の研究班と協力をしながら活動を行っています。協力している研究班の名前はこのページの最後に記載しています。その中からのメッセージとしてお伝えしたいことは「長期フォローアップに必須の3アイテム」です。
- 長期フォローアップに必須の3アイテム
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①治療サマリー
②フォローアップ手帳
③フォローアッププログラム
簡単に補足説明をします。
- ①治療サマリー
- どんな病名だったか、最初はどの程度病気が広がっていたか、という病気の基本的な情報から、使用したお薬の名前と量、放射線治療の内容、移植治療の内容、治療中の出来事などを記録したものです。治療を受けた病院から遠く離れたところに引っ越しをしても、新たな土地の医師に見せれば大変重要な情報になるはずです。
- ②フォローアップ手帳
- 病気の種類、治療内容などによって、受けるべきフォローアップの内容が違ってきます。また、薬の副作用も人によって出方が違うこともあります。したがって、“患者さんひとりひとりのリスクをきちんと把握して、それに見合ったフォローアップをしましょう”という方針を持つことが大切です。フォローアップ手帳は、このような目的のために使うことを想定しています。どのような検査をいつ受ければよいか、という予定と、それまでに受けた検査の結果の記録を書き込む手帳です。もちろん、①治療サマリーと一体であったほうが良いですね。
小児白血病リンパ腫治療研究グループ(JPLSG)というグループの中に設置されている長期フォローアップ委員会との共同作業として“長期フォローアップ手帳”を作りました。まずは、いくつかの病院で試験的に使用し、色々とご意見をうかがいながら完成させて行く計画です。このホームページの作成を行っている国立成育医療センターでも独自のフォローアップ手帳を作っています。詳しくはこちらをご覧ください。 - ③フォローアッププログラム
- 上の②ですでに書きましたが、それぞれの方に応じたフォローアップ計画のことを意味します。世界的に見てもどのようなものが良いのかは手探り状態です。JPLSGという小児白血病リンパ腫治療研究グループに設置されている長期フォローアップ委員会でフォローアッププログラム案を検討中です。また、日本小児内分泌学会にCCS委員会というものがあり、そこでもプログラムを検討中です。国立成育医療センターのフォローアップ手帳には病気別のフォローアップ計画が記載されております。
- 【ふたつめの柱】― 小児がん登録体制の整備 ―
- どんな病気でも共通して言えることは、診断法や治療法の進歩や予防法の普及によって、病気の治療成績がどの程度良くなったか、どの程度病気そのものが減ったか、ということを知るためにはきちんとした調査を行う必要があります(このような調査を疫学調査と言います)。
がんの場合には、年間に何人の方がどんながんを発症し、その方たちが例えば5年後、10年後にどうなったのか、例えば10年後にがんでお亡くなりになる方がどの程度減ったのか、ということを調べて初めて、現在行っている治療の効果が分かるわけです。このような調査のことをがん登録と呼びます。海外ではがん登録を義務付けている法律を持っている国が多いのですが、我が国には法律がありません。
研究班では、このような状況でも可能な限り正確な情報を得るためにはどのような仕組みが可能かについて研究を進めています。ひとつは、日本小児がん学会と協力して、学会が行う「小児がん全数把握登録事業」に役にたつインターネットプログラムの開発を行いました。なお、この登録は日本小児血液学会が実施している「小児血液学会疾患登録」とも連携しています。
わが国には「地域がん登録」という制度があります。自治体単位で実施する制度なのですがすべての自治体で実施している訳ではありません。研究班では千葉県と協力して、地域がん登録においてどのようにすれば小児がんの登録を軌道に乗せることができるか、という研究を行っています。
- 【あとがき】
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ここではごく簡単に、わたくしが担当しております研究班の活動内容について記載しました。より詳しくお知りになりたい方のために、下記にリンクを載せました。また、お問い合わせいただければ可能な範囲で対応させていただきます。なお、研究班の正式な名称は以下です。厚生労働科学研究費補助金(がん臨床研究事業)「小児がん治療患者の長期フォローアップとその体制整備に関する研究」(H19-がん臨床-一般-012)
連絡先:国立成育医療センター研究所 藤本純一郎(jfujimoto@nch.go.jp)
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